ビジネスのための雑学知ったかぶり 結合双生児と枯葉剤
ベトとドクの兄弟は981年にベトナムで生まれた下半身が結合した結合双生児でした。1988年分離手術が行われましたが、ベトは重い脳障害を患って、今でも寝たきりの状態です。しかし、分離後ドクはコンピュータープログラムを学び、職を得ることができました。このドクが今月16日結婚したとのニュースが報じられました。
気になるのは、ベト、ドク兄弟について報じられるとき、ほとんど必ず「ベトナム戦争時に枯葉剤の影響で」結合双生児となったと枕がつくことです。ベト、ドク兄弟はベトナム反戦運動のシンボル的な存在で、1986年にもベトが急性脳炎になって治療のために日本に移送された時も、それら団体の支援がありました。しかし、ベト、ドク兄弟は枯葉剤の犠牲者なのでしょうか。
誤解を生じると� ��けないので断っておきますが、私は一般的な意味で枯葉剤散布の害を否定しようとしているのではありません。ベトナム戦争時ジャングルに紛れるベトコンや北ベトナム軍に手を焼いたアメリカは、密林の除去と、作物の死滅による兵糧攻めを狙って、7万4千トン以上、一説では100万トン近くの枯葉(除草)剤を、主として空中から散布しました。
アメリカは大量の枯葉剤を散布した
枯葉剤は様々な種類が使用され、ドラム缶の色にちなんで、ブルー、ピンク、オレンジ、グリーンなどと名づけられました。中でもオレンジとよばれた枯葉剤は、ダイオキシンを含んでいました。ダイオキシンは極めて毒性が強い上に分解しにくく、長く地中に残留します。使用された薬剤の総量は致死量換算で400億人分におよぶとも言われています。
ダイオキシンは分解されないので、食物連鎖を通じ濃縮され、人体に影響を与えます。そのため、一般の成人でも心臓病、神経症、皮膚炎などの症状を引き起こしますが、さらに深刻なのはホルモン分泌系の異常により、DNAの複製、つまり遺伝に悪影響を与える可能性があることです。
正確な統計はないようなのですが、ベトナムでは枯葉剤の影響と思われる、 奇形児(良い言葉ではないのですが、一応使っておきます)、死産が多数発生したと推定されます。奇形児の象徴がベト、ドク結合双生児ということなのでしょう。
しかし、少なくとも結合双生児はベトナムだけに生まれているのではありません。人間の場合、10万回の妊娠に1回の割合で結合双生児が発生していると考えられています。日本でも「シャム双生児」という言葉がベト、ドク兄弟の前は結合双生児を表す言葉としてよく使われました。
なぜ私はツインと他のない感じることができるシャム双生児の呼び方はタイのエン、チャン結合双生児に由来していますが、この双生児は1811年に生まれ、1829年にアメリカに渡り、1834年にアメリカ市民権を獲得しています。2人は1874年まで結合したままで生き延びますが、生まれたときと同様にともに生涯を閉じました。残っている写真から見ても、兄弟は結合双生児にはまれな健康状態を保っていたことがうかがえます。
シャム双生児は人気者になった
結合双生児の発生の原因はよくわかっていません。受精卵から成体にいたるまでの細胞分裂の過程で、成体を形成するオルガナイザーとよばれる機能が1個ではなく2個生じるためではないかと言われていますが、なぜ2個になるかは不明です。
オルガナイザーを複数発生させて結合双生児をつくことは、マウスでは薬品により再現性のある実験として行われていますが、人間ではもちろん実験などできないので、同様の効果があるかは不明です。
枯葉剤、タバコ、公害などの被害は、ナイフで刺したしたような意味では、障害、死亡との因果関係を証明することは困難です。この困難関係の証明が難しいことを利用して、企業や国家は「因果関係が不明」と言って責任を回� ��することが多いのは、ご承知の通りです。
私は彼女がよさそうだ私の友人を教えてくださいダイオキシンの害は青酸カリのように即死を招くようなこともありますが、致死量でなくても長い期間に蓄積、濃縮されることにより害を与えます。遺伝に対する影響も考えれば、危害は長い因果連鎖をたどっているため、直接的な因果関係の証明を求められてもどうしようもありません。
しかし、石綿と中皮腫のように病気の発生率が著しく通常より高くなった場合は、「疫学的」に因果関係が証明できたと考えるべきでしょうし、実際現在はそのような考えに基づいて訴訟などでの責任追及は行われています。
そのような意味で結合双生児と枯葉剤の因果関係の疫学的証明は少なくとも十分には行われていないと考えられます。ただ、ここで問� ��にしたいのは枯葉剤の恐ろしさを、結合双生児を見たときに普通の人が感じる「怪物!」という意識を反戦、平和運動に利用してしまっていることです。
最初に書いたように、枯葉剤が遺伝的な害も含め、長期的にベトナムに大きな害悪を与え続けていることは間違いありません。同じように劣化ウラン弾、クラスター爆弾、地雷などの長期的害悪は厳しく指弾されるべきです。本来なら戦争犯罪として裁かれるべきものが放置されているのです。
しかし、ベト、ドク結合双生児を何の証拠もないのに「枯葉剤の影響」と思い込み、断じ続けるのは止めるべきだと思います。それは結合双生児や種々の「奇形」を怪物として恐れ、同時に「怖いもの見たさ」の覗き趣味で見ているのを、反戦、平和でごまかしていると言うと言い過ぎでしょうか。
テーマ:進化論的組織論 - ジャンル:政治・経済
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