2012年2月22日水曜日

そこに娘をみて父親

『静かな落日』各地鑑賞団体感想 劇団民藝

『静かな落日』各地鑑賞団体感想

和郎の姿を私の父と重ねあわせて見てしまいました。私の父もペンで正義を貫こうと戦っていました。いつも机に向かう後姿を見て育ってきたのです。父に対する尊敬と愛をいまでも思いつづけています。「好きよ、お父さんが好き」のセリフ、心に伝わりました。家族の愛の大切さ、今の時代、どのように変わってしまったのでしょうか。よい作品に出会えてとてもうれしく思いました。


松川事件ということで陰湿な芝居かと思いきや、途中途中で笑いがあり、とてもよかったと思います。父親を思い出させていただきました。


樫山文枝さんの素晴らしさにうたれました。独白の自由自在さ。アンサンブルもとてもよかった。今の日本人が失った純粋さが清々しかった。


父と娘の関係の深さを強く感じさせられました。作家として生きる父親に、幼いころは甘えたくとも甘えられずにいた桃子。彼女の成長に大きく影響している父に、年月とともに愛情さえも抱いてゆく心の変化が心にしみ、ラストシーンでは、桃子のセリフに涙がでて、とても感動しました。


"私はあなたを愛しています"と言ってどのくらいの時間がかかるでしょうか?

「今週末は実家に帰ろう」。観劇しながら無性に父に会いたくなりました。桃子と和郎は決して穏便な父娘関係ではありませんでしたが、そこからは父と娘の普遍的な愛情が痛い程に伝わってきました。娘にとって父とは特別な存在です。ややこしく、愛しく、憎めない。和郎を見る桃子がいつしか自分と重なっていました。今春就職し親元を離れてみると、家族の賑やかさ、窮屈だった愛情も愛しく思え、桃子と和郎のやりとりが懐かしく感じられました。和郎と宇野の友人関係、和郎と柳浪の父子関係。役者の方々が表現される人間臭さを通じて、改めて私と繋がる大切な人たちを思い返しています。


私は鑑賞するまで、激しいやりとりが交わされるものと勝手に思っていた。予想に反し、淡々とした日常が広津家の光景として描かれていた。確かに様々な問題が持ち込まれるが、それをユーモア交じりにこなしていく日常の姿に人のたくましさを感じた。俳優の方々の演技も静かさゆえに情感がにじみでていてよかった。


恋愛と一夫多妻の違いは何ですか?

求める愛情と受ける愛情は、ときとして行き違うことがある。そっとぬぐおうとしてもこぼれ落ちそうになる。それでも人は求めていく。父と子、母と子、表現には違いがあっても本来、無限に深く注がれるものが親から子からへの愛情であろう。桃子が父親の愛情を確信していく過程は、父の人間性、生き方を丸ごと受け入れる過程でもあった。  芝居を見終えた後、感じた一種のさわやかさは、いま、この年月を重ねて理解できるみずからの両親への思いからであったように思う。


志賀直哉の「松川の事件のことも裁判のことも僕はさほど知っていたわけじゃありません。ただ広津君の目を信じていたから……」というセリフが心に残っている。こんな人間関係を多くの人がもてたら、他人に対して思いやりのある、やさしい社会になると思いました。


『静かな落日』の父と娘との関係を観ていると、亡くなった父と私との関わりを思い出し、少しホロッとしてしまいました。特に「お父さん、好き」というセリフを耳にするたびに、父の姿を思い起こしてしまいました。伊藤さん、樫山さんの声の素晴らしさ、セリフのやりとりがとても印象的で、心にいつまでも残っています。


あなたは彼らがあなたに何をしたいように他人わたし行う

何よりも樫山文枝さんがすばらしかったです。23歳から50歳に変わってもまったく違和感がなく、それぞれの場面で舞台に引き込まれ、演劇鑑賞のたのしさを存分に味あわせてくれました。


劇後半における伊藤さんと樫山さん親子の絶妙な間と対話。なんともいえずほのぼのとしたあったかさ。父を思い出して涙が流れた。いまの時代、親子に限らず対話がない。言わなければ気持ちは通じない。本当にしみじみと静かな時間を味わうことができました。


桃子が吐息をついた時、樫山文枝さんの背中が一瞬ゆるんだ。背中でお芝居をみせる凄さを感じながら、自然に伸びた背筋が最後まで凛としていてとてもきれいだった。松川事件、父と娘との愛、文豪たちの思い等、重いテーマが展開されたが、それぞれの思いを深くして生きた日常は、熱くも『静かな落日』のように静かに穏やかに結ばれていった。


淡々としているのだけれど、一つ一つのセリフが深く重いようでいて、軽やかに心地よく胸に響く。そんなステキな作品でした。広津和郎さんのたおやかに強く自分の信じる道を生きていく。その清々しい生き方をちゃんと胸に刻もうと思います。広津さん、かっこいい!



感動した。また観たい。役者が良かった。装置、衣裳がよかった。ロングランがうなずける。久しぶりに感動しました。アンサンブルが抜群だった。


戦中、戦後の厳しい時代の中、毎日を自分の信念、心のおもむきに向かい、あせらずじんわりと生活していく広津和郎の家族の穏やかさ、静かに浪々と生活する風景が、とても心地よくやわらかな言葉づかいに、観ている自分も心の疲れがとれたような、とっても気持ちのいいお芝居でした。


激しい動きがあるわけでなく、全体的にしっとりしているのに、ユーモアがあって笑わせてくれる芝居のつくりは、広津和郎という人をそのまま表現しているようでした。女性のことだったり麻雀だったり、いい加減に見える面もありながら、本当はすごく真剣で、「忍耐強く、執念深く、みだりに悲観もせず、楽観もせず」、そんな生き方が、すーっと心にしみ込んで来ました。



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